定量脳波(Quantitative Electroencephalography qEEG)

定量的脳波とは何か?

 定量脳波(qEEG)は、デジタル技術を用いて主に皮質活動または「脳波」を反映する頭皮表面の電気パターンを測定するものである。脳波活動が多電極で記録されて、コンピュータにより数量化される。これらの数値は統計的分析されて、脳機能の色マップに変換される。

 

従来の脳波と比較して、QEEGの長所は何か?

 定量的脳波(qEEG)分析技術は、アナログ紙脳波記録ではできない多くの異なる方向で、脳波の付加的な測定と表示を提供することができる。いくつかの定量脳波法は、一般に「脳波脳マッピング」と呼ばれ、学習障害、注意欠陥、脳外傷などの判別分析だけでなく、電圧や周波数、コヒーレンス、非対称性と正常値との統計的比較(Zスコア)をトポグラフィー表示する。モンタージュ、フィルターとゲイン設定は、記録をレビューする時に後から変更することができる。デジタル脳波記録は、アナログ紙脳波と異なり、脳波を表示する方法において非常に柔軟性がある。                 

CT Scan
fMR
MR   
SPECT  
PET
 

PET/MRI
(Multi-Modal)

MEG
(Superimposed on MRI)

qEEG
 




 

 

 他のシステムと比較して、qEEGは非観血的な方法で、fMRI、SPECTとPET画像診断と比較して優れた時間解像度を提供する。MEGシステムは、高い時間・空間解像度を提供するにもかかわらず、qEEGと比べると比較的高価な脳モニターの手段である。さらに、脳波装置は、他の画像診断装置(MEG、fMRI、SPECTとPET装置は通常は部屋全体を占拠する)よりはるかに小さい。

 脳イメージング法に関して、qEEGは代謝と機能を見るが、MRIとCTスキャンは構造を反映する。脳波電極配置の国際10/20システムに基づく多極電極記録(19部位)はデジタル技術によって数量化される。そして、この数値は特定の周波数帯において、そして特定の課題(例えば計算、読みその他)を行っている間に、この数値は正常値データベースと統計的に分析比較され、被験者の脳機能不全の場所と範囲を示すことができる。
 限局性か全体的な脳機能不全は、カラーの脳マップまたはグラフとして表現され、qEEGは器質性および機能的な脳障害を区別するための有効な道具となる。典型的なパターンにより、異なる障害(単極対双極性うつ病)は区別される。症状は脳波活動と直接相関する。そして、余計な試行や推測を必要とせず、薬物への反応を予測あるいはモニターして、具体的で有効な方法を提供する。

 多電極記録によって生じるデータの量は医師がすべてのデータを解釈することは困難なほど膨大である。qEEGはこのデータ分析と要約をカラーのトポグラフィーマップやスペクトル解析、グラフという形で提供する。他の利点は以下の通りである:

* データベース比較

 検査した人の状態は、大勢の統計学的データベースと比較することができる。こうした比較により、脳機能において、どの周波数が、あるいはどの部位が、どの程度平均からずれているのかが分かる。

* 薬剤の

効果が期待できるかどうか

 qEEGは、向精神薬から効果を得られるかどうかを決定する単純で有用な方法を提供する。最近の研究により、医師が処方選択のためにqEEG法を用いることにより、薬物への反応性が改善し副作用を最小にしうることを示された。

* 機能的と器質性障害を識別すること

 qEEGは、器質性か機能的な脳障害を区別するための有効な手段として用いることができる。この機能的なデータは、CTスキャンとMRIから得られるデータに優れた補足的な要素を提供する。
 例えば、qEEGはうつ病と過活動の生理的および機能的な原因を区別するために有用な手段である。この方法は、小児が神経病学的基盤による注意欠陥障害か心因性のものかを決定するのと同様に、アルコール依存症または薬物乱用による脳萎縮の症例を確認するために使用することもできる。統計データベースとの比較と特殊なソフトウェアにより、脳損傷と学習障害を判別することができる。

* 方法の単純さ

 この方法は、非侵襲的(体に負担を与えない)で安全で、変化を経時にみることができるという長所がある。通常は準備と検査に1時間以内しか要せず(当院ではだいたい30分で行います)、信頼性がある(きれいなデータが1分間あれば94%、2分間あれば96%の信頼性がある)。

* 動的な脳マップ
Skil Topometricシステムのサンプル

コンピュータで作られたカラーの動的な脳マップは、被験者が説明されている問題を思い浮かべやすくする。このように、それにより、コミュニケーションは促進され、本人や家族が状態を理解しやすくなる。

* ニューロフィードバック

 qEEGと対になる技術は、脳波バイオフィードバック(別名ニューロフィードバックまたはニューロセラピー)である。ニューロフィードバックは、脳波の特徴のオペラント条件づけに基づく脳波バイオフィードバックである。
 qEEGは、どの場所で、どの状況(読むこと、聞くこと、計算すること、その他)下で問題が悪化するかを示し、重要な情報を提供してくれる。この分析により、フィードバックのために正確な電極配置をできて、訓練の間に使用すべき課題が示される。脳が実際、より活動状態にあるとき、脳波フィードバック(視覚のおよび聴覚性刺激)は、δ波(0.5-3Hz)とθ波(4-7Hz)の振幅を減少し、α波(8-12Hz)とβ波(12-18Hz)の振幅を増加するように信号を送る。
 ADHDの人に実施される機能的な神経画像処理研究により選択的注意作業の間に、前帯状束皮質(ACC)に機能異常があることが示された。ADHDの小児の前帯状束皮質の異常な脳波活動というQEEGによる結果は、現在神経画像処理研究で確認されている。最近のfMRI検査(2006)において、ADHDの小児における選択的注意の神経基質のニューロフィードバック訓練の効果が調査された。他のいかなる病態も呈しなかった15人の薬物療法を受けていないADHD小児がニューロフィードバック訓練グループ(試行群)と訓練を受けないグループに無作為割付けされた、そして、その他の5人の小児は対照群(ニューロフィードバック訓練をしない)に割り当てられた。彼らはストループ試験を行う間のスキャン(fMRI)を受けた。ニューロフィードバック訓練の前には、すべての小児で左上頭頂葉の活動性が認め認められた。ニューロフィードバック訓練の後、試行群だけは、右の前帯状束皮質 ― 選択的注意のカギとなる神経基盤 ― の有意な活性化を示した。(Johanne Levesquea et al, Neuroscience Letters, Vol 394, Issue 3, 20 February 2006, p 216-221)

 

何を行うのか?

 electrocapを使うことで、予め電極の位置が決められているので、安定した装着が容易になる。そして、各電極と頭皮の接触を良好にするために少量のゲルが使われる。この処置は、痛みも不快感もない。脳波記録は、それから4つの条件で行われる:閉眼、開眼、視覚空間作業、計算作業(当院では3つの条件で行います:閉眼、開眼、DVDを見ている間)

 

臨床的トポグラフィー脳波法

 国際10/20システムによって配置されるリード線付きのフィットした電極キャップは、標準的19チャネルEEG記録を行うために使用される。脳波データは、それから、フーリエ変換を使って周波数成分が分析される。これらのデータの評価は、いろいろな周波数帯フォーマットでさまざまな図形および統計表示される。これらは、データ表、スペクトルマップ、個々の周波数帯のトポグラフィーマップ、コヒーレンスなどを含む。統計解析は小児から成人の正常値データベースと被験者のデータを比較し、正常データベースを比較される。

 

qEEGからどんな情報が得られるか?

 qEEGは、脳機能と認知や学習への影響に関する情報を提供する。コンピュータ分析された脳波の結果から、脳機能が正常(年齢による正常範囲)から優位に偏位しているかどうかがわかる。
qEEG(定量脳波)検査の説明
 
 この検査は基本的には15分ほど脳波を測定するだけです。通常の病院で行われる脳波検査は@てんかんの診断 A睡眠検査 B睡眠時無呼吸検査の際に行われます。検査の目的は異常な波形を見つけること(てんかん波)と睡眠ステージを評価するためです。
 当院で行う脳波検査は、それらと全く違う目的で行います。正常か異常かを判断するためとか、何らかの病気を診断するために行うわけではありません。
 脳の中には大脳皮質の神経細胞だけでも約140億存在し、その他の細胞(小脳だけでも1000億あると言われています)全部を合わせると、中枢神経系全体で1000〜2000億の細胞があると言われています。それらの細胞がニューロンという繊維で連携しあっており、天文学的な数の情報交換を常に行っているわけです。
 人間の細胞は電気的信号で情報交換・伝達を行っていますので、脳の中では膨大な電気的活動が常に起こっているわけです。しかし、脳は分厚い頭蓋骨に守られているため、頭皮の表面でその活動を測定しても、極めて微小な電気活動しか測定できません。
 それを機械で増幅し頭皮上の各部位(19カ所)で測定します。各部位の活動性のパターンによって、その人の脳の状態を間接的に評価するのがこの検査の目的です。
 詳しくは以下の文章を参照してください。